穂高集中登山

8月6日〜9日
荒松・他

北尾根敗退

 北尾根敗退というよりも敵前(北尾根)逃亡と言って間違いないであろう。その原因として気力のなさ、其の元になる体力不足が考えられる。6〜7月と毎週のように山(六甲山)に出かけトレーニングに励んだつもりであるが結果においてあまり体力増強には繋がらなかった。もう歳だからと諦めたくなるのだが、76歳にしてマッキンレー登頂に成功した人の事を考えればもう少しはやれるのではないかと気を取り直している所である。以下は北尾根敗退の簡単な記録である。

8月7日
午前5時30分、光用さんと二人で小梨平を先発する。明神池まではまずまずのペースである。ここでしばらく休憩していると後発の竹田さんと佐々木さんがやってくる。ここからは両氏とともに行動する。横尾までは美しい穂高連峰を眺めながらの普通りのペースである。この時点では今日中に5、6のコルまではと考えていたのだがーー、横尾からしばらく行くと屏風岩に出会うこの岩はやはり懐かしい。
 「天高く聳える屏風の岩肌に我が青春のトレースを見る」
本谷橋出会いまでは少し時聞を要した。この時点では5、6のコルも怪しくなる。ここで大休止。ここからは佐々木さんと別れ三人が先発する。竹田さんのゆっくりではあるが確実なペースについてゆくのが辛い。竹竿を杖替わりにしている姿に他の登山者が注目するもののやはりしんどいのである。この時点で今日の5、6ノコルは諦めていたように思う。
 正午、竹田さんに少し遅れて涸沢に着く。竹田さんは今日中に奥穂小屋に行くとの事。天気も怪しくなってきたので慌ててツェルト設営に取り掛かった。ツェルトを張り終えると、すぐに大粒の雨。ツェルト内がびしょ濡れになったにのはいうまでもない。一時間で雨も止み晴れ間も見えてきたので涸沢ヒュッテのテラスに行きビールを飲む。久しぶりの穂高は懐かしい。
 「涸沢ヒュッテのテラスでホット一息をつく
  前穂高北尾根、釣り尾根、奥穂、北穂南陵へとつづく山稜が私を青春へと誘う
  あの高い夏空の下岩壁を攀じ登った青春は喜びと希望と憧れとともに
  流れる白い雲の彼方へときえてしまった
  たとえ夏の強い光が降り注ごうとも私を岩壁へと誘う事はないだろう
  もはや私は歳をとったのである
  遠い峰々に想いをめぐらしつつ、私はビールを飲み続けた」

 其の後ツェルト前でビールとウィスキーを飲んでいると突然の雨、日暮前の雨が北尾根断念への決定打となる。其の後は長い長いそして辛い辛い夜となった。
 『お互いに背中押し合い暖をとる雨の涸沢ツェルト悲し』

8月8日
 夜明けをまって重い足取りで下山を開始する。目指すは嘉門次小屋、イワナ定食、ビール、コツ酒の美味しかったのは言うまでもない。食後明神池でへばっていると佐々木さんがその後すぐに松村さん夫妻と出会う。後は小梨平まで歩けば、何の成果もなかったが印象に残ったこの山行も終わりである。
 「過ぎ去りし日々の楽しき思い出に杯重ねつつ夜は更け行く」
 「来年こそ北尾根登りて祝い酒たらふく飲んで意気洋洋」

(荒松)